坂本龍一のUS

友人から「坂本龍一のおすすめを教えて欲しい」とメールがあり、
坂本龍一について考察しながら、これから坂本龍一を聞くという人にどのように説明したら良いのか考えながらの問答。このメールに色々書いたので、それをここに転載することをその友人に許可をもらい今回はそれを記載する。

以下は僕が思う坂本龍一というアーティストに関する考察、そしておすすめの曲などについての、友人との私的なやり取りだ。


あまり歌モノが無くてカラオケにはないので披露できませんでしたが、坂本龍一は僕の専門ですね。かなり詳しいです。なので長くなるかもしれません。熱弁を振るってしまうかもしれません。
とは言えオススメの2・3枚を紹介するのはちょっと難しいな。
坂本龍一の良さっていうのは楽曲の良さというよりも文化的な意味合いが大きいからね。
つまり時系列に聴いて来た人が沢山いて、そういう聞き方というか、存在自体が文化みたいになっているところがあって、それで評価されている人だからね。勿論、楽曲自体も良いものもあるけれど。
その時代にこういう音楽や活動、発言をした!という、更にその系譜みたいなところが評価されているというか。
だから曲そのものよりも案外、エピソードとかその時代の哲学や社会みたいなものが重要。
簡単に一言で言えば、それこそがいわゆる「文化人」という事になるんだろうけど。つまりミュージシャンというよりも文化人としての意味合いが大きい人。
坂本龍一を聞いたり詳しいこと自体が、昔から(昭和の頃から)の意識高い系のオシャレみたいなところもあるし。

さて、坂本龍一は昔から10枚くらいベスト盤やミニアルバムやらサントラやらコンセプトアルバムやらを出したのち、やっとオリジナルアルバムを出すような人で、確かにどれを聞いていいのか分かり辛いと思います。殆どどれもこれもベストアルバムと言っても良い程、ベストばかりアホみたいに出している人です。それでいて活動歴が長いので曲も沢山あるしね。実際、かなりアホなところもある人で、1970年代には「ヒップホップなんて下品で取るに足らないくだらない音楽で絶対にあんなモノ流行らない。ジャズも同じでクダラナイ」と言っていたにもかかわらず、今現在はどっぷりとそれらにハマっていたりするアホ野郎です。
なのでアルバム単位で聞こうとするよりも、どれでもいいのでベスト盤でも聞いて、むしろ要所要所の「曲単位」で知っていった方が良いかもしれません。この「入門」が難しいのも(とっつきにくさも)、坂本龍一を文化人たらしめる要因の一つなのかもしれないと言ったら言い過ぎでしょうか?

個人的には「音楽図鑑」というメチャクチャ古いアルバムが好きで、さかりゅーも未だにこのアルバムの曲をコンサート等で演奏することが多いのですが、一般的にはお勧めできません。難解な前衛アート、現代アート的な「現代音楽」だからです。
つまり、それを勧める僕も、「こんな難解な音楽を理解できる俺ってカッコイイだろ!?」という様な欺瞞というか驕りというか虚栄心というか、もっと言えば選民思想みたいなものがあるわけです。
現代音楽といえば、スティーヴ・ライヒやジョン・ケージなどがありますが、ジョン・ケージの4分33秒という曲などは、曲の良し悪しではなくそういう発想が凄いのであって、「いい曲」ではないですよね?そういうところが坂本龍一にもあるということです。

それ以外で言えば「SMOOCHY」というアルバム。(NYや南米の都会っぽいオシャレな感じが好き)
もし、グルッポ・ムジカーレというベストアルバムがあれば、それもなかなかキャッチーな曲が多くて良い。ビューティーというアルバムも良い。

あと個人的に好きなのは、映画のテーマ曲です。単体の、というか、サントラではなくテーマ曲になっている曲が好きです。
完全にクラシックの領域の音楽ですが、

・映画「シェルタリングスカイ」のテーマ曲 (映画は全然面白く無い) 
https://www.youtube.com/watch?v=CDanB7YxLag

・映画「ラストエンペラー」のテーマ曲と他数曲 (映画は歴史的な意味があってなかなか良い。長いので全部見ている人はあまりいないが僕は映画オタクでもあるので全部見た。坂本龍一は確か日本陸軍の甘粕正彦大尉役で出演し、相変わらずの大根ぶりも披露。) 

・映画「リトルブッダ」のテーマ曲 (映画も素晴らしい。)

いずれもベルナルド・ベルトルッチ監督の映画の音楽ですが、それらの曲を抑えておけば、あとはベスト盤に出ている様な曲を何曲か聴けば良いと思います。というか最初はUS、UF、CFというベストアルバムをを聴けば良いです。

また、坂本龍一の曲は古い曲が殆どなので、その時代背景なんかを思ったりするとまた印象が違ってくる曲もあると思う。そして、最初は良い曲だとは思わなかったけど後からじわじわ思い出して良い!と思えてくるような曲も沢山あります。曲として良いわけではないけれど、「あの頃を思い出す…」みたいな良さもあったり。


「美貌の青空」なんかは割と坂本の(歌ものの)代表曲で、
大貫妙子ヴァージョンで聞くと良い曲と思えるかもしれない。
http://dj-music.blog.jp/archives/9862069.html


また、Ballet Mecaniqueに関しては次のような見解もある。
(中谷美紀のクロニックラブ。ドラマ「ケイゾク」の主題歌の元ネタ。坂本龍一)
http://dj-music.blog.jp/archives/10036802.html

ラストエンペラーに関しては、これで坂本龍一は米国のアカデミー賞を受賞して名実ともに「世界の坂本」になったので、良い悪いの問題でもないくらい良いとも言えるw。

あと、沢山書いたのでこの文面、僕がやっている「ひろぶろDJミュージック」の方に転載させてもらうかもしれません。
よろしいですか?よろしく。

US (ソロ作品集)
坂本龍一
ワーナーミュージックジャパン
2002-10-23


次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル ~自分を作る・売る・守る!!!!